りとすら

書きたいことがあんまりありません

シニカルなメタギャグが突き刺さる『イン・ザ・プール』

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

 よくできている。
 よくできているのだ。

どっちが患者なのか? トンデモ精神科医伊良部の元を訪れた悩める者たちはその稚気に驚き、呆れ…。水泳中毒、ケータイ中毒、ヘンなビョーキの人々を描いた連作短篇集。

 注射フェチでマザコンの医者、伊良部のもとにくる、強迫症患者。
 ここだけ見ると、なんつーギャグだよ、おいおい。と思ってしまうが、読み進めるうちに、強迫症の症状が誰でも一度は考えたことのある妄想を再構成したものであるから、読者の身に迫ってくる。


 パラノイア的な要素を誰もが持っている現代だからこそ、シニカルに楽しめる。