りとすら

書きたいことがあんまりありません

パビリオン山椒魚

http://www.pavillion.jp/


 オダギリジョー主演、香椎由宇助演の「邦画らしくない」映画だった。どちらかというとオランダ+日本って感じ?

ストーリー: 自称21世紀の天才レントゲン技師・飛島芳一(オダギリジョー)のもとに、香川(光石研)と名乗る男がやってきた。彼は、芳一にサラマンドル・キンジロー財団の動物国宝である、オオサンショウウオのキンジローを盗み出し、レントゲン撮影するよう依頼する。ところが、芳一はキンジローの誘拐に失敗してしまい……。


解説:自称天才レントゲン技師が、国宝のオオサンショウウオを巡って繰り広げる奇妙な新感覚サスペンス。短編シリーズ『亀虫』で注目を浴びた新人監督富永昌敬の長編デビュー作。主演のオダギリジョーが、脱力系の演技でレントゲン技師をコミカルに演じる。ヒロインの香椎由宇をはじめ、KIKI、きたきまゆ、津田寛治など、個性的ぞろいのキャストも魅力。若い才能が集結した、まったく新しい日本映画に仕上がっている。

 「自称天才レントゲン技師」、という極めてオカシイ(というより非現実的すぎ!!)視点から語られるオオサンショウウオを巡って「キンジロー財団」の過去の話、キンジロー財団を狙う「第二農協」などインチキ臭さに溢れた映画で、とてもシュールな出来栄えなのだが「うわー胡散臭くて面白いなぁー」って視点で油断して見ていると途中からオカシナ話に観客も引きずりこまれてしまっている。


 そのきっかけっていうのは間違いなくオダギリジョーの「狂言回し」能力の賜物であり香椎由宇演じる「あづき」を巡っての過去の事象を、その父親役である高田純次と喋るレントゲン車のシーンで「バシャり」と物語が動き出す。


 オダギリ(飛島芳一)が従来の「アカルイミライ」的なキレっぷりで香椎を助けるのでなく、「ゆれる」みたいに神経質に策略をめぐらすのでもない。どちらかというと「時効警察」的なシュールさを爆発させたベクトル。


 あづきを救うお話があづき視点で語られていると彼女を救う為に飛島芳一はいきなりヒゲ面になってしまっていてアレ?オカシイな?と思ったときにはもう「パビリオン」に引き込まれている。


 あづき視点からみれば、家庭の事情(キンジロー財団という特殊な新興宗教じみた財団)だったり、飛島芳一とのちょっと危ない恋愛だったり、日本映画にはありふれた(むしろ古典的な)ものだらけなのだけれどそこに飛島芳一視点を持ち込むことによって現実を超越したシュールレアリズム的な匂いが生まれてくる。そこに観客は魅せられてしまう。


 ちょっと疲れた現実認識に革新をもたらしてくれるそんなスパイスみたいな作品。