人はいつか死ぬ。チープでありふれすぎていて。
いくら言葉を重ねようとも、塗りつぶせない事を前にして日々の中で忘れていく。
親はいつか死ぬ。って言った方が理解が深まる。友達はいつか死ぬ。って言った方が理解が深まる。自分の死だけが信じられず、他人の死なら見届けられる。死について何かを考えることには、何か決定的な断絶がある。
人間が生きてきた軌跡は残るんだろうか。
誰かに覚えて貰えているという事は、アイデンティティの問題なんかじゃなくて、ただ単純な疑問として残る。
白い鯨が悠然と海を泳いでいるという事を僕は想像できる。
物に魂がやどるというか、関係性が染み込んでいくんじゃないか。なにかそういった思いだとか、願いみたいなものが人間の側に染み込んでいって、それがそのモノとの関係性を作り上げていく。
僕にはもう、物を語ろうとする欲望が残されていない。