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バベル見てきました。うーん、これは一般向け映画じゃない気がします。
ハリウッド的なものを想像してたんだけど、あの「21グラム」の監督ということを知って納得。(ちなみに「ポケモンフラッシュ」のシーンがあるので注意)
壊れかけた夫婦の絆を取り戻すために旅をしているアメリカ人夫婦のリチャードとスーザン。バスで山道を走行中、どこからか放たれた銃弾が、スーザンの肩を撃ち抜く。なんとか医者のいる村までたどり着くが、応急処置がやっと。彼は英語がなかなか通じない村の住人たち、対応が遅いアメリカ政府に苛立ちを露わにするが…。同じころ、東京に住む聴覚に障害を持った女子高生のチエコは、満たされない日々にいら立ちを感じていた…。
メキシコの名匠、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が放つ衝撃のヒューマンドラマ。モロッコ、メキシコ、アメリカ、日本を舞台に、異なる事件から一つの真実が導かれていく。複数のストーリーがひとつに収束していく展開は、『アモーレス・ペロス』〜『21g』をより発展させたものといえ、監督三作目にして、“イニャリトゥ流”の確立がなされたともいえよう。第79回アカデミー賞において助演女優賞にノミネートされた菊地凛子の存在感のある演技は評価するに値する。最優秀作曲賞を受賞したグスタボ・サンタオラヤのスコアも素晴らしい。
「バベルの塔」といえば、旧約聖書の有名な説話で、神に近づこうと塔を建てていた人々が神の怒りを買い、塔を築けないように、神が人間の言語を引き裂いたって話なんだけど、この映画のテーマもコミュニケーション不全にある。
外面的なコミュニケーションの限界点は、言語と言語の(発声、文法など「言語」的なすべての方法)差異でしかないが、人間本来のコミュニケーションの問題点は、そういった表層的なものではない。
「思う」気持ちと、それを「伝えられない」ことに対する焦りだ。
場面は3つで展開する。
きっかけになたった発砲場所、「砂漠」ではブラッドピット夫婦が、壊れてしまった夫婦の絆を試されると同時に、バスの乗客との軋轢、現地民との摩擦、大使館の対応に翻弄される。
と同時に砂漠での兄弟の確執が展開する。
ジョシコーセーがもてあます「東京」では、聾唖の菊池凛子*1が自分の不自由な体をもてあまして右往左往する。
処女を捨てられない(非処女の処女に対する優越感による駆動)自分はただでさえ聾唖でハンデが大きいのに女としても劣っているのかもしれないという恐怖(現代的消費圧力!)が彼女を駆動する。
メキシコ人だらけの(監督の故郷)「メキシコ」(アメリカ)ではアメリカで乳母をしていた女性が息子の結婚式のためにメキシコに帰省したのをきっかけに人生が狂いだす。
淡々と事件がおき、冷酷に時間が過ぎていく。みんな悪くない。でもみんな悪い。強くない人間たち。
いつしか3つの事件は一本の銃で結びつけられる。「点はいつしか線になる」
世界の裏側で子供の銃に撃たれて倒れる女性と、パンツを脱ぎ捨てるジョシコーセーが同時に存在するという悲しさ。
物語はエンディングに向かって緩やかに収束していく。バックにながれる音楽が映画をある一定のイメージに締めつける。*2
このエンディングにはいろいろな解釈があると思うが、私見を述べるならば
- 「メキシコ人は救われない」これは監督が思っていることであって、まだまだ弱小国の安全と権利は保証されていないという「現実」。
- 「処女に対する劣等感」っていうのは外国人の現代日本に対する誤読ではないのか。5年前まで(「制服少女たちの選択」)通用していた言説空間は死んでいる実感がある。「劣っているかもしれない不安」は女子高生ではなく、「いじめ」にテーマを絞るべきだろう。それがいまの空気なのでは?
- ブラッドピットは、ミスキャストな気が。「アメリカ的な」キャラを用意しなければいけなかったのならば、それもしょうがないかもしらん。
3つの「現実」を描いたバベルは、普通の映画の2倍くらいの厚みがあって、連環によって、説得力を増している。
疲れるが、とても素晴らしい映画。現実の多様性について、冷酷に突きつけてくる。
ラストシーンの菊池凛子と役所広司の絡みは、希望を暗示するとともに、一時の安定でしかないことを示していて、いち観客としてあまり希望を持てなかったのは、ぼくだけですかね・・・
「希望なのよ。人は互いに分かり合えるかもしれない、ということの。」
「好きだ、という言葉とともにね。」
「でもぼくはもう一度会いたいと思った。その時の気持ちは、本当だと思うから。」
「だけどいつか気づくでしょう。あなたのその背中には、遥か未来を目指すための羽があるということを。」
コミュニケーション不全といえばエヴァを思い出してしまうわさ。
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